はじかれてつめたくなったまま轢かれる
あなたとそれ以外のなにか

しねやしない
だから
しねなくてかわいいの
たくさんしてよ


ゆふ櫻の散りぢりを余すことなくあなたにあげる
こほりを齧るさみしいあなたにあげる
昏れ果つあなたにあげる
みだれ哭きゐしあはれなどれいのあなたにあげる
つきに鋏を入れて花花燃ゆあなたにあげる
うとうとしたたるひれびれな葉脈のあなたにあげる
ましろの煙がはられたみずをあるくあなたにあげる
惜し花のみなとよりもどれないあなたにあげる
春まつまどろみのあなたにあげる
うつくしい恐れに極まるあなたにあげる
青芒牡丹梔子このよの凡てあなたにあげる


うちがわのなまぬるくてぐにゃってなったところが
だんだんすくなくなっていって
塩をふりかけるともっとちっちゃくなっちゃう
もう保たないとおもった
じきにしんでしまうもおもった
なくなっちゃうとおもった
“きっとしぬまで好い”
どこへもゆけないのなら
どこかへゆけたふりをしたら好い
だれもかれも騙してしまえば好い
そうしてよるのまばゆい
ままで居て

こわされた夕暮れはきれいだ
わたしたちがなす術もなくただここにすわっているから
それがしぬまでくりかえされることを
ずっと望んでいられないから

ねがいごとを幾つしてもかなわないのに
わたしは漠然とそこに在る
そのひとつひとつをなぞる幽霊が
ひき摺りおろされたことばの断片を潮っぱくする

あたしのおなかのなか
よあけにぽこぽこへんてこなおとがする
かえるみたいなんじゃなくて
おもちゃのどらむみたいなおとがする
あるいは
ばすたぶでおぼれるあなたの吐く泡ぶくが
まるみでむずがるみたいなおとがする

香ばしいっていうのずるい
火だるまのわたしが溶かしたことばを
かわいいっていうのずるい
吐いたってねむれないわたしの感かくを
砂糖水に浸してあまいっていうのずるい
なかみぐちゃぐちゃに漏らしちゃったら
あなたがすきだと云ってくれるの
すごくずるい

花だんでやけどしちゃった
滲んだらしんじゃえばいいよ
あなたのくらやみはすっぱい
もうにどと泳いでいかないで
化かされたよるのほねがくだけた
しねるゆめのはだざわり
わたしよるにふやけたりしない
どろどろに似てない
おだやかに裂いたらね
すきなのでてきちゃうよ
しらないあなたが恐ろしくてかなしい
お気の毒に
あなたの
ねっとりとひっ掻くわるい癖がひどく好い


だれもがしんだひとにやさしい
ただあなたのいないことがきがかりで泣きそう

「この感情の浮き沈みといつまで踊りつづけたら好いの」